月下の誓約
雪祭り最終日の夜、和成は紗也と共に城下の大通りにいた。
まだ傷の癒えきっていない和成を護衛につける事に塔矢は難色を示したが、紗也がどうしても和成と一緒に雪祭りに行きたいと言い張ったので、夜の数時間限定で許可が下りたのだ。
今宵は雪が止み、風もなく空は晴れ渡っていた。
大通りの両脇には様々な雪像が立ち並び、色とりどりの柔らかな明かりに照らし出されている。
雪像の裏には露店が並び、暖かい飲食物を買い求める客で賑わっていた。
雪祭り最終日とあって、最後を締めくくる灯りの行進を見ようと多くの見物客が詰めかけている。
紗也は珍しそうに度々駆けだしては、あちこちの露店を覗いて目を輝かせていた。
「紗也様。あまり私の側を離れないで下さい」
和成が声をかけると、紗也は慌てて駆け戻ってきて、眉を寄せながら和成を睨む。
「ちょっと、お兄ちゃん! ”様”はやめてって言ったでしょ?!」