月下の誓約
いつもは女の子らしい華やかな色合いの着物を着ている紗也も、今日は兵士たちと同じ地味な鶯色の軍装束に身を包み、長い髪は後ろに束ねている。
そして額に巻いた鉢金と両腕には、自軍の印をつけていた。
そのせいか司令所にいる兵士たちは、和成と一緒にいる紗也が、誰だか気付いていないようだった。
和成は皆に声をかけて紗也を紹介する。
「今回は総大将として紗也様がお越しです。開戦の合図は紗也様に発して頂きます」
それを聞いて司令所中の兵士たちが、バタバタと慌てて立ち上がり、紗也に頭を下げた。
同時に紗也も驚いて和成に尋ねる。
「私、総大将なの?」
和成は呆れたように嘆息した。
「君主なんですから当然じゃないですか。開戦まで少しの間、そちらにお掛けになってお待ちください」