月下の誓約
和成は困ったように、黙って紗也を見下ろす。
それを紗也はすがるような目で見上げた。
「……一回だけですよ」
結局根負けして和成がそう言うと、紗也は嬉しそうに笑顔で頷く。
「うん」
和成は少し身をかがめて、紗也だけに聞こえるように、耳元で小さくその名を呼んだ。
紗也はくすぐったそうに首をすくめて小さな声で笑う。
初めて呼ぶ敬称なしの紗也の名は、和成自身もなんだかくすぐったい気持ちになった。
それから二人は、露店を覗いたり、雪像を眺めたり、大通りをあちこち歩き回る。
そうしているうちに灯りの行進が始まる時刻となった。
背の低い紗也のためによく見える場所を確保しようと、一緒に通りの方へ向かう。
すると紗也が突然立ち止まって周りの地面を見回した。