月下の誓約
あの夜と同じ、紗也のぬくもりと匂いを感じながら目を閉じる。
目を開くと、自室の天井が見えた。
夢を見ていたらしい。
紗也と共にある未来など考えるだけ愚かだった頃には、決して見る事のなかったような夢。
あの暗い水面は海だったのだろうか。
いつだったか、平和になったら見に行きたいと紗也が言っていた。
戦のない平和な世になったら海を見に行こう。
我知らず、涙があふれて枕を濡らしている事にふと気付く。
涙などとうに涸れたと思っていたのに。
久しぶりに姿を見せた月の光が窓から差し込み、部屋の中を青白く照らしていた。
夜明けにはまだ程遠い。
和成は目を閉じると流れる涙もそのままに、あまりにも平和で幸せな夢の余韻にしばし浸っていた。