月下の誓約
電話を掴んで項垂れたまま、和成はゆっくりと部屋を出てきた。
チラリと紗也の怒った顔に視線を送った後、深々と頭を下げる。
「申し訳ありません! 電話を部屋に置いたまま出かけておりました」
身体を直角に折り曲げた和成の頭を見下ろして、紗也が冷ややかに言い放った。
「命を狙われてるかもしれない人が、緊張感足りないんじゃないの?」
「本当に申し訳ありません」
もう一度謝って、和成は恐る恐る顔を上げる。
「あの……また女官たちを眠らせていらしたんですか?」
和成が尋ねると、紗也は憮然として答えた。
「ちゃんと話してきた。どうしても和成に一言言ってやらないと気が済まないからって。女官たち笑ってたわ」