月下の誓約


 紗也は面倒くさそうに昨夜和成の部屋を訪れた事とその理由等、和成に話したのと同じ事を塔矢に話した。

 塔矢は納得してひと息つくと今度は和成に目を向ける。


「おまえも、やましい事がないなら変に隠そうとするな」
「すみません。紗也様が叱られるかと思って」


 やましい事が全くないわけでもない。

 和成はもう一度紗也と塔矢に頭を下げて、執務室を出た。

 技術局へ向かおうとしていると、後ろから塔矢が声をかけてきた。


「おまえ、何か悩みでもあるのか?」
「いえ、別に……」


 そう言って目を逸らす和成の肩を、塔矢が拳で軽く小突く。


「ウソつけ。紗也様に関する事だろう」

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