月下の誓約
「きのう右近に”すっかり人間っぽくなった”って言われたんですけど、塔矢殿から見てどうなんでしょう? 私はまだ中途半端ですか?」
塔矢はニヤリと笑って腕を組む。
「完璧な人間なんていないだろう? そういう意味じゃ、俺もおまえもみんな生涯中途半端なんだ。だが、あの頃に比べてどうかという意味なら、おまえはかなり男前になったぞ」
「へ? 男前ですか?」
尻の辺りがむず痒くなって思わず笑顔が引きつった。
「”かわいい”よりは進化したという事だ」
塔矢はひとりで納得したように頷いているが、和成には中途半端よりも意味がわからない。
和成はガックリと肩を落としてため息をつく。
「なんか塔矢殿と話していると、時々うまく煙に巻かれているような気がします」
「わからないからといって、また右近に聞くなよ」
そう言うと塔矢は執務室へ引き上げていった。