月下の誓約
5.激震
三日後の正午過ぎ、軍部に激震が走った。
不穏な動きを見せていた灘元と浦部が同盟したという。
昼休み返上で部隊長たちが招集され、再び臨時の軍議が開かれた。
元々仲の悪い二国のこと、対杉森同盟である事は明白である。
いずれ、同盟という名の降伏を迫ってくるだろう。
もちろん杉森側としては端からそんなものに応じるつもりはない。
ということは秋津で一二の大国を同時に相手として厳しい戦を強いられる事になる。
仮に杉森が和平に応じたとしたら、今は静観している浜崎や沖見も黙ってはいないだろう。
どちらにせよ戦は避けられないのだ。
杉森が灘元浦部同盟軍の要求を受け入れなかった場合でも、浜崎、沖見が動く可能性はある。
援護を申し出て恩を売る作戦だ。
聞いてしまったら断れなくなる。
断ったら同時に戦う敵を増やしてしまうからだ。
聞かないようにするため、同盟軍の要求が来る前に杉森国は国民に対して非常事態宣言を発令、明日正午を持って全ての国境を完全封鎖し、他国からの通信を一切遮断することとした。