月下の誓約


 夕方、再び軍議の席についた和成は思い切り不機嫌な顔をしていた。

 右斜め前の上座にどういうわけか紗也が座っていたからだ。

 和成は不機嫌顔のまま、声の調子を低くして静かに問いかける。


「どうしてあなたがここにいらっしゃるんですか? 雪祭りは一年くらい先ですよ」


 和成のイヤミに、紗也も不機嫌を露わにしてむっとしたように答えた。


「私も出陣するからよ」
「承服いたしかねます!」


 和成は机を叩いて立ち上がる。


「先の戦とは規模が桁違いなんですよ?! 司令所にいたからといって安全とは言えません。本陣まで攻め込まれる可能性は充分にあるんですから!」


 上から怒鳴りつける和成に、紗也はひるむことなくまっすぐ見つめて指差した。

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