月下の誓約


「だったら、城にいれば安全なの? 城の軍人はほとんど出払うんでしょ? 私だったら、みんなが前線にかまけてる隙に手薄な城をこっそり落としに行くわよ。その時、中に城主が護衛も付けずに丸腰で座ってたらそれこそ思うつぼなんじゃないの? そもそも戦時下に安全な所なんてどこにあるのよ」


 会議室に奇妙な沈黙が流れる。

 二人の言い争いをハラハラしながら見つめていた部隊長たちが皆、目を丸くして固まっていた。
 塔矢と和成も呆気にとられて、同様に紗也を見つめる。

 少しして塔矢が和成に尋ねた。


「おまえ、紗也様と戦略の話でもしてるのか?」
「いえ、もっぱら女官たちの噂話をお伺いしておりますが……」


 和成が呆けたように返答すると、塔矢は大声で笑った。


「おまえの負けだ。紗也様の方に理がある」
「……わかりました」


 和成は渋々承諾して、椅子に座り直す。

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