月下の誓約


 和成はその日一日電算室に詰めて、自室に戻ったのは真夜中だった。
 戦略はある程度ひとつにまとまりつつある。
 明日、国境が閉鎖されれば大きな動きがあるだろう。

 和成は中庭へと降りる石段に腰掛け、いつものように月を見上げた。

 頭が一旦戦略から離れると、わき上がってくる問題は紗也の想いにどう答えるか。

 戦がなければ、まだズルズルと先延ばしにしていただろう。
 仮とはいえ、命に期限が刻まれると先延ばしにしてもいられない。

 紗也に答えを告げずに曖昧なまま死んでしまったら、死んでも死にきれない。


「あ〜っ」


 和成は声を上げてのけぞると、そのまま後ろの廊下に仰向けに寝転んだ。

 しばらく薄暗い天井を眺めていたが、不意に起き上がり、背筋を伸ばして両手でひざを叩く。


「よし、決めた! 明日、紗也様に話そう!」

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