月下の誓約
「まぁ、大軍には違いないが、所詮は烏合の衆だ。ついこの間までケンカしてた奴らのにわか同盟で統制がとれているとは思えん。付け入る隙があるとすればそこだな。せいぜい撹乱してやるさ」
ニヤリと笑う塔矢に、和成は益々不安そうな顔になる。
「なんか、楽しそうに見えるんですけど」
和成が呆れたように言うと、塔矢は平然と言い返した。
「楽しいとも。何にしても初めての経験ってのは不安もあるが、わくわくするもんだろ?」
「そうかもしれませんけど……。今までは戦が終わったら何しようって考えてたのに、今回は負けたらどうなるんだろうって、そればかり考えてしまうんです。今まで戦を軽く見ていたわけではありませんが、負けを意識した事はありませんでした。圧倒的な戦力差のせいで、負けがちらついて仕方ありません。負けたらこの国はどうなるんでしょうか? 紗也様は……」
暗くなって俯く和成の頭を、塔矢は軽く小突く。
「やる前から負ける事を考えるな。やってもみないで悪い結論ばかり考えてどうする。考えるべきはできるかどうかじゃない。いかにして成すかだ」