月下の誓約
明日に備えて早めに夕食と風呂を済ませた和成は、自室前の石段に座って月と桜を眺めながら時が来るのを待っていた。
やがて紗也が夕食を終えたであろう時間になり、おもむろに立ち上がる。
廊下に上がろうとした時、懐の電話が鳴った。
これから会いに行こうと思っていた当の本人紗也だ。
『ねぇ、和成。お花見しない?』
「花見ですか? まだ七分咲き程度ですけど」
『私の庭の桜は満開なのよ。ちょっと散りかけてる所もあるの。今日は満月だし、見に来ない?』
和成は思わず微笑んだ。
満月の夜に桜が満開になったら同時に楽しめる。
そのささやかな願いが叶ったのだ。
「いいですね。ちょうどお話ししたい事がございましたので、お伺いしようと思っていたところです」
『じゃあ、待ってるからね』