月下の誓約


「本当にみごとな満開ですね」
「でしょ? 戦が終わる頃には散ってると思うともったいなくて」


 すでに機嫌の直った紗也が、横から顔を覗き込んできた。
 和成は黙って微笑み返し、再び桜に視線を戻す。

 しばらくの間二人ともそれぞれ飲み物を飲みながら桜と月を眺めていた。

 紗也が桜を見つめたまま、おもむろに口を開く。


「今日ね、塔矢に私の気持ちを話したの」


 和成も桜を見つめたまま問いかけた。


「塔矢殿は何と?」
「私の意思を尊重するって」
「そうですか」


 和成は一度月を仰ぎ見た後、手にした湯飲みを机に置いて、紗也の方へひざを向ける。

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