月下の誓約


「おいしいですよ」


 そう言って酒を飲みながら横目で紗也を見つめる和成の顔が、戦場で策を巡らせる軍師の表情になっている事に紗也は気付いていなかった。


「少しだけ、味見なさいますか?」


 和成は意味ありげな笑みをたたえて紗也に問いかける。


「え? いいの?」


 嬉しそうに見上げた紗也の唇に、和成は軽く口づけた。

 紗也は驚いて一瞬固まった後、和成の触れた唇を舌先でペロリとなぞる。
 そして、上目遣いに和成を見つめた。


「……味、よくわかんないけど……。でも、酔ったのかな。なんか、顔が熱くなってきちゃった……」


 紗也の顔がみるみる朱に染まる。

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