月下の誓約
うっかり女官の詰め所でも開けてしまったらどうしよう、とちょっとドキドキしながらそっと戸を開けてみる。
幸い、三つ目で寝室を探し当てた。
灯りを点けて中に一歩入った途端、和成は思わず感嘆の声を上げる。
「広っ……」
和成の部屋の十倍はあろうかという広い空間に、家具は壁に埋め込まれた戸棚と、紗也なら五人は寝られそうなくらい大きな寝台が部屋の真ん中にあるだけだった。
和成は寝台に歩み寄り、紗也を寝かせるために布団をめくって思わず顔が引きつる。
布団の中に以前紗也にあげた自分の上着が、縦長に丸められて横たわっていたのだ。
「……俺の上着、抱き枕にしてたわけ?」
苦笑した後、その姿を想像し、まるで自分自身が紗也に抱きしめられて一緒に眠っていたような錯覚に陥り、少しドキドキしてしまった。