月下の誓約


 てっきり熟睡しているものと思い込んでいたので、和成は飛び上がりそうなほど驚く。
 聞き間違いかもしれないので声をかけてみた。


「紗也様?」


 返事はない。
 さっきの妄想が聞かせた幻聴だったのだろう。

 大きくため息をついて再び部屋を出ようとすると、今度は先ほどよりも大きく少し苛々した声がはっきりと聞こえた。


「和成、こっち来て」
「は、はい」


 返事をして咄嗟に部屋の戸を閉める。

 暗闇に目が慣れてきた。
 天井付近にある明かり取りの窓から差し込む月光で、紗也の寝ている寝台がはっきりと見える。

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