月下の誓約


 そこに紗也がいるのはわかっているし、見えているが頭が混乱して身体が動かない。

 どういう事?
 やっぱり、そう言う事?
 でも、いいんだろうか。
 それを繰り返し考えていると、鼓動は早くなり、握りしめた手の平にじんわりと汗が滲んできた。

 手の平の汗を着物の腰の辺りで拭うと、意を決して和成は寝台に歩み寄る。

 側に立ったままで問いかけた。


「な、何かご用でしょうか?」


 我ながら間抜けな問いかけだと思いつつ、反応を待つ。
——が返事はない。

 答えようがないよなと思い、寝台の横にひざをついて顔を覗き込んだ。

 眠っている。

 どう見ても眠っているように見える。

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