月下の誓約


 明け方、懐の電話の振動で和成は目を覚ました。
 あらかじめ設定しておいた目覚ましが作動したようだ。

 外はまだ薄暗い。

 目の前に紗也の寝顔があり、驚いて一気に目が覚めた。
 目が覚めたので紗也の寝室でそのまま眠ってしまった事を思い出す。

 紗也は今も和成の左手を握ったまま眠っている。

 しばらく寝顔を眺めていたが、そろそろ部屋を出ないと女官たちが紗也を起こしに来るだろう。

 自分がここにいる事の言い訳を考えるのも面倒なので、そっと左手を引き抜こうとした時、紗也がぱっちりと目を開いた。

 ぼんやりとした表情で和成を見つめている。
 目があったので微笑んで挨拶をした。


「おはようございます」


 聞こえたのか、聞こえてないのか、紗也は未だにぼんやりと和成を見つめている。
——が、突然目を見開いて飛び起きた。

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