月下の誓約
紗也が訝しげに眉を寄せる。
「何、それ?」
「存じません。私がお聞きしたいくらいです」
和成はすました顔でそう言った後、少し笑ってからかうように見つめた。
「てっきり誘ってらっしゃるのかと思って、まんまとおびき寄せられて捕まってしまいました」
未だに握られたままの左手を挙げて見せると、紗也はあわてて手を離す。
「ごめん! もしかして、ずっと床に座ってたの? 一緒に寝ればよかったのに」
平然と言う紗也に、和成は少し赤面する。
「断りもなく、そんな図々しい事できませんよ。それに先客がいましたしね」
「先客?」
紗也が不思議そうに首を傾げた。