月下の誓約


「私の上着です。抱き枕になさってたんですね」


 紗也が気まずそうに頬を赤らめてそっぽを向く。


「いいじゃない! 和成と一緒にいるみたいで安心して眠れるんだもん。本人はいつも忙しくてちっとも一緒にいてくれないんだし」

「これからは時間が許す限りずっと一緒にいます」


 和成がそう言うと、紗也は少し照れくさそうに笑って両手を広げた。


「ねぇ。ぎゅって、して」


 乞われるままに紗也を抱きしめる。


「そろそろ女官たちがやって来るんじゃないですか?」
「私が呼ぶまで来ないから大丈夫」


 この現場を見られて、また城内の噂の的になる心配はなくなったものの、いつまでもこうしているわけにもいかない。

 総大将と軍師がそろって戦に遅刻しました、では笑い話にもならないし、第一士気も下がる。

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