月下の誓約
和成が離れようとすると、突然紗也が大声を上げた。
「あーっ! 思い出した! ひどいじゃないの、和成!」
「何の事ですか?」
心当たりのない和成は、首を傾げて問い返す。
「思い出したの。夢の話。私と一緒にごはん食べてる最中に慎平がやって来て、おいしいお酒があるって言ったの。それを聞いて和成ったらホイホイついて行こうとしたのよ。だから”どこ行くのよ。こっち来て”って呼んだの。私よりおいしいお酒を取るなんて、ひどいじゃないの!」
話を聞いて、和成は思いきりため息をついた。
「あなたの夢の中の事まで責任もてませんよ。私の事、どれだけ飲んだくれだとお思いなんですか」
紗也は和成の言葉を聞き流して、脈絡のない事を聞く。
「それはそれとして、いつまで敬語なの?」
和成は一瞬絶句して項垂れた。
「……もうしばらくご勘弁下さい……」
そして名残惜しそうにもう一度紗也を抱きしめると、軽く口づけて自室へ戻った。