月下の誓約
後方支援部隊となる情報処理部隊や補給部隊は城の前庭に集合し、今回の本陣となる東方砦へと出立する。
和成は紗也の寝室を辞してから一時間後、戦支度を整えて紗也を迎えに行った。
そして一緒に皆の集合する前庭へ向かう。
城を出てすぐの広場に馬を引いた塔矢が立っていた。
塔矢たち前線部隊は一足先に前線へ向かっているはずである。
何かあったのか不安になって和成は尋ねた。
「塔矢殿、先に出たのではなかったんですか? 何か不測の事態でも?」
塔矢はニヤリと笑いながら馬の側を離れ、大股で和成に歩み寄ってくる。
「何もない。和成、一発殴らせろ」
「は?」
和成が返事をするよりも先に側までやって来ていた塔矢は、平手でいきなり頬を打った。
後ろにいた紗也が驚いて小さな悲鳴を上げる。