月下の誓約


 隊長が電話を受けて話を聞くと、彼に戦況図が送られてこないと言う。
 何度も電信で要求したが返答がないので電話が故障しているのかと思い、連絡してみたらしい。

 和成が彼に問いかけた。


「その電話の機種番号は何ですか?」
『九二三です』


 和成は額に手を当て、目を閉じる。


「……新型です。その電話はもう使わないで下さい。予備の電話を持っていないなら、前線から撤退して下さい」


 斥候が了承して電話を切ると、和成は城の電算室に指示を出した。

 通常、無線電話から送信された情報は制御用主機を介して即時、宛先へ送信されるようになっている。
 しかし、新型無線電話は試験中のため、一旦主機に情報が蓄積され、手動で送信処理を行わない限り宛先に送信されない設定になっていた。

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