月下の誓約
「どうかなさいましたか?」
和成が不思議に思って尋ねると、紗也は気まずそうに上目遣いで見つめた。
「お手洗い、行ってもいい?」
「もしかして、我慢なさってたんですか?」
「だって、司令所から出ないようにって隊長たちがお願いしてたし」
和成は思わず目を閉じてため息をつく。
「そういう生理的欲求は別です。すぐお行きになって下さい」
「うん」
勢いよく立ち上がり、紗也は出口に向かって駆けだした。
その背中に和成が釘を刺す。
「迷子の馬を見かけても追いかけないで下さいよ」
紗也は立ち止まって振り返ると頬をふくらませて
「わかってるわよ」
と言うと、司令所を出て行った。