月下の誓約
出て行く紗也を見送りながら、兵士たちが少しの間クスクス笑う。
和成が戦況図に視線を戻したと同時に、隣から慎平が声をかけた。
「和成殿。ひとつ気になる情報を見つけました」
「どれ?」
身を乗り出して和成は、慎平の前の画面を覗き込む。
その情報は、浦部の陣営から弓を携えた兵士がたった一人で激戦地を迂回して、杉森の本陣の方へ向かっているというものだった。
「たった一人で隠れるように移動してるって、刺客じゃないですか?」
慎平が不安げな顔で和成を見つめる。
「紗也様? なわけないよな。敵にはうちに総大将はいない事になってるし。てことは俺?」
自分を指差す和成に、慎平がため息混じりに答えた。
「でしょうね。他人事のように言わないで下さい」
「いつ出たって?」
「浦部の陣営を出たのは三時間ほど前です」
「まずいな。そろそろ来る頃じゃないか? 警備に知らせとかないと」
和成は立ち上がって隊長に報告すると、懐から電話を取りだし警備隊長に連絡をした。