月下の誓約
お手洗いから司令所に紗也が帰ってきた。
入口を一歩入った時、視界の端で何かが光る。
気になってそちらへ目を向けると、窓がほんの少し開いているのが見えた。
開いた窓の隙間から弓につがえられた矢尻が覗いている。
咄嗟に周りを見回したが誰も気がついていないようだ。
弓がゆっくりと引き絞られ、矢尻の先がまた光った。
いやな予感に鼓動が激しくなる胸を押さえて、矢の狙う先を視線でたどる。
そこには、電話をしている和成の背中があった。
全身の血が凍り付くような錯覚に陥る。
反射的に紗也はその名を呼びながら、和成に向かって全力で駆けだした。