月下の誓約
男は怯えたように目を見開いて和成を凝視する。
「電話持ってるだろ? 上官に連絡しろよ。失敗したって」
動かないでいる男に、和成は声を荒げた。
「早く!」
男は空いた手で慌てて懐から電話を取りだし操作し始める。
途中、チラリと和成を見た。
和成は少し笑みを浮かべて、静かに釘を刺す。
「家族とか、違うとこにはかけない方がいいよ。自分の死に際の声、聞かせたくないだろ?」
図星だったのか、男は顔をゆがめて、再び電話を操作する。
相手が応答し男が口を開こうとした時、和成が電話を取り上げた。