月下の誓約
『どうした?! うまくやったか?』
上官と思われる男の興奮した声が聞こえる。
「残念だったね」
和成がそう言うと、一瞬の沈黙の後相手が問い返してきた。
『誰だ?!』
「我が名は杉森軍軍師、三津多和成」
『何?!』
和成が名乗ると相手は更に興奮した声を上げる。
「俺は生きてるよ。彼はもうすぐ死ぬけどね」
和成は言うだけ言って、回線がつながったままの電話を刺客の顔の横に放り投げた。
そして一層怯えたような表情をする刺客の胸に、ためらうことなく一気に刀を突き刺す。
泥水の中でどしゃ降りの雨に打たれながら、主の断末魔の声を届け終わると、彼の電話は役目を終えてゆっくりと眠りについた。