月下の誓約
紗也がおそらく助からないだろう事はわかっている。
和成は冷たい表情で男を見下ろすと、一旦刀を引き抜いた。
「俺の大切な女なんだ。どうしておまえなんかに奪われなきゃならない!」
憤りをぶつけながら、すでに骸と化した身体に再び刀を突き刺す。
「やっと想いが通じたのに! やっと手に入れたのに!」
どしゃ降りの雨に全身ずぶ濡れになりながら、和成は機械のように何度も男の身体に刀を突き立てた。
和成を追って司令所を出てきた慎平は、取り憑かれたように刀を突き刺している和成を見てその場に立ち尽くす。
少しして悲痛な声を上げた。
「和成殿! もう死んでます!」