月下の誓約
少しして雨音にかき消されそうなほど低く掠れた声で和成がつぶやいた。
「……悪い、慎平。後、頼む……」
不審に思い慎平は顔を上げる。
目の前で刀を持った和成の手がゆっくりと持ち上げられ、刃が首筋にあてがわれようとしていた。
「ダメです!」
慎平は咄嗟に刀を持った和成の腕を両手で掴む。
その腕を振りほどこうと和成が必死で抵抗した。
「死なせろよ! 主を守れなかった間抜けな護衛はどうせ極刑なんだ!」
「それでも私は、和成殿が死ぬのはイヤです!」
しばらく揉み合ううちに、刃が慎平の頬をかすめた。
慎平が少し顔をゆがめて小さな声を漏らす。