月下の誓約
司令所に戻ると情報処理部隊長が、自ら乾いた手ぬぐいを差し出してくれた。
和成は礼を言って受け取り刺客を討ち取った事を告げる。
何かを探すように辺りを見回す和成に、隊長は答えた。
「紗也様は砦内の霊安室にお移りいただきました。このような騒々しい部屋の床に、いつまでもお休みいただくわけにはまいりませんので」
「そうですか」
和成が頷くと、隊長は深く頭を下げた。
「申し訳ありません、和成殿。斥候の新型無線電話を回収し忘れていたのは私の落ち度です。城に戻った者から順次回収しておりましたが、彼だけ遠くまで出ていたので一度も城に戻っていなかったようです。私がきちんと回収していれば刺客の存在にも早く気付いて、対応できていたかもしれません。そうすれば紗也様もこのような事には……」
隊長は目を固く閉じて言葉を飲む。