月下の誓約
「隊長、あまり気に病まないで下さい。隊長が新型を全て回収していたとしても刺客を阻止できたとは限りません。今は目の前の戦に集中しましょう」
あまりにも冷静に答える和成に違和感を覚えて、情報処理部隊長は顔を上げると和成を見つめた。
特に何がどう変わったとははっきりわからない。
だが、司令所を出て行く前とは何かが違うような気がして、和成を見つめたまま黙り込んだ。
「紗也様の事、前線には?」
和成の問いかけで隊長はハッと我に返り、慌てて返事をする。
「……あ、いえ、まだ知らせていません」
「よかった」
和成はホッとしたように息をついた。
「戦が終わるまで知らせないで下さい。敵が動かないので不思議に思っていましたが、刺客のおかげで敵の作戦が見えてきました。一気に戦局を動かします」