月下の誓約


 和成により敵の作戦が説明された。
 それによるとおそらく次のようなものだろうという。

 敵は杉森軍の統制力は軍師の和成によるものだと思っているようだ。
 合戦中和成の指示により部隊長たちが的確に動いているのだと。

 少数ながら統制のとれた杉森軍の前線を崩すのは、容易ではない事がこれまでの戦でわかっている。

 そこで司令塔の和成を討ち取り、前線の統制を崩した上で一気に攻め込もうという作戦だったのだろう。
 そのため刺客の連絡を待って動かずにいたのだ。

 だが実際には杉森軍の統制力は、部隊長たちの連携によるものだ。
 和成は事前に作戦を提示するだけで、戦況が大きく変化しない限り、合戦中に指示を出す事はほとんどない。
 司令所から逐次送られてくる戦況情報を元に事前の作戦に従って部隊長たちは独自の判断で動いている。
 稀に指示を仰ぐ事はあるが、ごく稀だ。

 つまり、司令所が機能している限り、和成を討ち取っても戦況にはほとんど影響がない。

 敵の作戦は元々破綻していた上に失敗したのだ。
 これを利用しない手はない。

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