月下の誓約
部屋の灯りを点けると、寒々とした殺風景な部屋の真ん中で、固い寝台に横たわる紗也の姿があった。
和成は歩み寄り、全身に掛けられた白い布を少しめくって顔を眺める。
朝に眺めた寝顔と変わらぬ穏やかな表情に、和成は目を細めた。
「いつまでお休みになるのですか? もう戦は終わってしまいますよ」
当然ながら返事はない。
紗也の頬にかかった髪を手でゆっくりと払い除け、頬に手を添えた。
「眠り姫を目覚めさせるのは王子様の接吻だっけ?」
そう言いながら身をかがめて、紗也に口づける。
触れた頬と唇の冷たさに、厳しい現実を思い知らされる。
身体を起こして少し紗也を見つめた後、和成は自嘲気味に笑った。
「……なわけないか」