月下の誓約
まどろっこしいのは性に合わない。
右近は机に頬杖をついて、単刀直入に問いかけた。
「おまえさぁ、あれから紗也様とちゃんと話したのか?」
湯飲みを置いた和成は淡々と答える。
「話したよ。戦の前日、俺の決意を伝えて結婚を申し込んだ」
「へ?! そんなとこまで話が進んでたの?!」
右近は驚いて身を乗り出した。
「で? 紗也様は何て?」
「受けて下さった」
「はぁ〜ぁ、なるほどな」
右近は大きくため息をついて椅子の背にもたれる。
和成が無気力になっている理由がわかったからだ。
「それ、塔矢殿には話したのか?」
和成は苦笑する。
「今さらどうだっていい事だし。塔矢殿には二度目はないと言われてるんだ。俺は今度こそ極刑だろう。でも待たせすぎだよな」
右近は和成の横に椅子を持ってきて座ると、おもむろに抱きしめた。
「なんだよ、いきなり」
怪訝そうに問いかける和成を、右近は更に抱き寄せる。
「泣いていいぞ」
その言葉に和成は少し笑った。
「泣けないんだ。……また、人形に戻ったのかもな」
右近は和成の肩に頭を乗せて嗚咽を漏らす。
「なんでおまえが泣くんだよ」
「おまえが泣けないんだから、代わりに泣いてやってんだよ」
「あいかわらず、うぜぇ奴……」
和成はそう言って、右近の背中をポンポン叩いた。