月下の誓約

 11.託された未来



 右近が尋ねてきた後、更に二日が過ぎた。
 和成は依然として謹慎中である。

 戦の日からずっとはっきりしない天気が続いていた。
 日中も日が照る事はほとんどなく、夜に月が出た事は全くない。
 和成はあの日以来、なんだか月に見放されてしまったような気がしていた。

 今日も朝から雨がしとしとと降っている。
 何もやる事がなく、やる気にもならない和成は、自室前の廊下に座って、中庭にそぼ降る雨をぼんやりと眺めていた。

 戦の前に七分咲きだった桜は、もうすっかり葉桜になっている。
 満開になったところを見たかどうかも覚えていない。

 気力もなく紗也の事を忘れたわけでも悲しみがなくなったわけでもないのに、案外普通に生活している。
 いっそ心を手放してしまえたならどれだけ楽だろうとすら思うのに、意識はこの世界にとどまっている。

 悲しみのあまりに気が狂れてしまった人の話はよく聞くが、自分の想いはその域にまで達していないということなのか。
 なんだかまた自分の気持ちがわからなくなってきて、ひざに顔を埋めた。

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