月下の誓約
俯いて、それでも力なく反論する。
「塔矢殿が二度目はないと言ったんじゃないですか」
「おまえに死なれたら国が困るんだ」
相変わらず塔矢の言う事は意味がわからない。
思わず顔を上げて訝しげに見つめた。
「どういう事ですか?」
「単純な事だ。おまえは君主と結婚したんだ。その君主亡き後、おまえが君主だからだ」
和成は思いきり目を見開く。
しばらくの間固まって言われた事を反芻した後、大声を上げた。
「はぁ?! なんで?! だって結婚と言っても女官長と塔矢殿が認めただけの事実婚で……えぇ?!」
「驚きすぎだろう。おまえはその覚悟を決めてたんじゃなかったのか?」
呆れたように言う塔矢に、和成は拳を握って力説する。
「私は紗也様をお助けしてお支えする覚悟を決めただけで、自ら君主になろうとは微塵も考えておりません」