月下の誓約
塔矢は目を細くして和成の頭を小突いた。
「大威張りで言うな。紗也様に結婚を申し込むなら、そのくらい考えろ」
和成は小突かれた頭を押さえて反論する。
「でも、大臣たちは認めてないんでしょう?」
塔矢は和成を横目で見ながら口の端を上げると、懐から書類を出して和成の目の前に突きつけた。
「おまえを伴侶とし自分と同等の権限を与える、という紗也様直筆の署名入り公式文書だ。大臣どもは全会一致で承認している。こっちが大臣たち承認の署名だ」
そう言って塔矢は、重ねられたもう一枚の書類を広げて見せる。
和成は目の前の書類を凝視した後、再び大声を上げた。
「聞いてません! いつのまにこんなもの……」
「そんなはずはない。何か聞き逃しているんじゃないのか?」
塔矢は書類を畳みながら和成の顔を覗き込む。