月下の誓約
少しして起き上がると、涙を拭い廊下へ出る。
そのまま中庭へ降りて空を見上げた。
二週間ぶりに姿を見せた下弦の月は、静かに和成を見下ろしている。
あの夜満月の下で立てた誓い、紗也を守る事は果たせなかったが紗也の国を守る事はまだできる。
和成は月を見上げて微笑んだ。
「じきにお伺いしますと申しましたが、もう少しお待ち下さい。あなたの望む世の中を献上いたしたいと存じます。そこからご覧になっていて下さい。この国が、秋津が、私の手で変わっていく様を」
さぁ、国を動かそう。
紗也の夢見た未来に向かって。
和成は月を見上げて目を閉じると、大きく深呼吸をした。
翌日、杉森国君主に就任した和成は外交に手腕を発揮し、わずか十年で二大国灘元、浦部を併合。
就任から十五年後には秋津島全土を統一。
秋津国初代国王となり、長く歴史に語り継がれる事となる。