月下の誓約


 優しい和成を初めて見た様な気がするが、どういう訳かちっとも嬉しくない。

 紗也は退屈よりも疎外感を覚え、息苦しさを感じた。

 少しだけ司令所の外に出たい。
 戦況が有利な状態なら、ほんの少し席を外すくらいは許されるだろう。

 そう思った紗也は席を立った。
 和成が焦ったように声をかける。


「紗也様、どちらへ?」


 腫れ物に触る様なその扱いにムッとして、紗也はぶっきらぼうに答える。


「お手洗い」
「あ、失礼しました。どうぞ」


 紗也は怒ったように早足で司令所の外へと出て行った。
 和成はその姿を見送ると再び画面の方へ向き直った。

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