月下の誓約


「鳥がお好きなんですか?」


 和成は相変わらず静かに問いかける。


「特に好きなわけじゃないけど、でも、あの鳥はかわいかったの」


 我ながら正当な理由になっていないと紗也は思った。

 いつもより強く怒鳴られる事を覚悟して身構えながら、恐る恐る和成を見上げる。

 黙って紗也を見下ろしていた和成は、顔を上げた紗也と目があった途端、穏やかに微笑んだ。


「私をからかうためになさったにしては度を超えていると思ったのですが、そうではなかったようで安心いたしました。今後は食堂裏にはお近付きにならない方がよいかと存じます。また鳥が運び込まれる事があるはずですから」


 そう言って和成は一層目を細めて微笑んだ。

 より一層幼く見える無邪気な少年のごとき笑顔に、紗也は目を見開いたまましばらくの間見とれる。

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