月下の誓約
和成が冷淡に言い放つと、塔矢は黙り込んだ。
少しして静かに問いかける。
『何があった?』
和成は机に手を付いて項垂れた。
肩が、声が震える。
「紗也様が……。私が目を離した隙に砦の外に出て行方がわからなくなりました。電話を追跡しましたが、紗也様のものは軍用ではないので電波が弱く、不通になっています」
『ちっ! よもや砦から出ることはあるまいと思ったのが徒(あだ)になったか』
塔矢が苦々しげにつぶやいた。
見えているわけでもないのに和成は頭を下げた。
「お願いします! 本陣の守りを固めて下さい! 今ならまだ、紗也様も砦付近にいらっしゃるはずです。全責任は私が負います!」