月下の誓約


『少し落ち着け。二時間だ。その間守ってやる。時間内になんとかしろ。秋月に援護は出せるか?』


「待って下さい。今……」


 少し冷静さを取り戻した和成は、隣の端末を素早く操作して塔矢と全部隊長に新しい布陣図を送信した。


「移動が少なくてすむ様に少し変更しました。こうすると秋月隊の左にいる茂典隊が手空きになるので援護に向かわせて下さい。私はすぐに砦を出て紗也様の捜索に向かいます」

『わかった。紗也様の身柄を確保したらすぐに連絡しろ。攻めるより守る方が消耗するからな。なるべく短くしたい』


「了解しました」


 通信を終えた和成は、行き違いで紗也が戻ったら塔矢と自分に知らせるよう皆に告げた。
 そして机に立て掛けておいた自分の刀を腰に差すと司令所を駆け出していった。

 塔矢隊の一般兵だった頃からの習慣で、和成は戦のたびに毎回自分の刀を持って来る。
 だが軍師になってからは司令所から出る事もないので、使ったことが一度もなかった。

 これから血を見ることになるかもしれないと思うと少し憂鬱になる。
 それが敵の血か自分の血かはわからないけれど、紗也の血だけは見たくないと思った。

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