月下の誓約


 肩越しに少し振り返って様子を窺うと、紗也が和成の足元にある敵兵の亡骸を凝視していた。


「あまり御覧にならない方がよろしいですよ」


 和成は苦笑しながら、血を拭った手ぬぐいを敵兵の顔にかけた。


「知ってる人?」
「いえ、存じませんが」


 脈絡のない質問を怪訝に思いながら、チラリと紗也を窺う。
 刺すような鋭い視線が和成を射貫いた。


「知らない人を話も聞かずに斬ったの?」


 今がいつでここがどこなのか、まるで理解していない紗也の言葉に和成は苛ついた。

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