月下の誓約
「斬れません」
紗也は意外そうに目を見開いた。
「敵なのにどうして?」
「わかりません。咄嗟にそう思いました」
どうしてそう思ったのか、和成自身が困惑していた。
先ほど胸に広がった不快感の正体もわからない。
紗也はそれ以上追及することなく、勢いよく立ち上がった。
「ま、いっか。和成が私を斬る事はないって事だから、もう怖くない」
そう言って紗也は、和成に笑いかけた。
「助けてくれてありがとう」