月下の誓約
おまけに敵兵からは鬼のように恐れられている、上官の塔矢までが丸め込まれたとは、腹立たしくて仕方がない。
和成はやり場のない憤りを、少しだけでも元凶にぶつけてやりたくなった。
「お説ごもっともですが、机に向かって三分とじっとしていられないあなたが、政治などとおっしゃっても説得力に欠けますね」
「失礼ね! 私だって少しは考えてるわよ!」
すかさず紗也が反論したが、和成は相手にしなかった。
そもそも君主が、常に考えていなければならない政治について、少ししか考えてない事が、反論すら説得力のないものにしている。
和成は紗也を無視して、塔矢に問いかけた。
「塔矢殿も今の理由に納得したんですか?」
二人の言い争いはいつもの事と、すでに放置して自分の仕事に没頭していた塔矢は、突然話を振られ、慌てて顔を上げた。