月下の誓約
いつもの笑顔が戻った事に、和成は内心安堵する。
「いえ、礼には及びません。本陣に戻りましょう」
「あ、ちょっと待って」
紗也は背中を向けて、先ほど覗いていた林の中に入っていった。
和成も後ろから林の中を覗く。
そこには一頭の馬がいた。
馬を連れた紗也が街道に出てくる。
手綱を受け取りながら、和成は尋ねた。
「これを追って来られたのですか?」
「うん。騎馬隊が出て行った時、誰も乗っていないこの子が後ろからついて行くのが見えたの」
司令所の外へ出た紗也は、昼間に見た馬を思い出し厩舎へ向かった。
ちょうどその時、騎馬隊が出て行くところに出くわした。
がっかりして引き返そうと思った時、後ろからフラフラとついて行くこの馬を見たのだ。