月下の誓約
誰かに知らせようと辺りを見回したが誰もいない。
仕方ないので、すぐに捕まるだろうと自分で追いかけた。
ところが知らない人間を不審に思ったのか、からかっていたのか、馬は紗也からつかず離れずスルスルと逃れて捕まらない。
夢中で追いかけている内に、砦を出て街道まで来てしまったのだ。
話を聞いて和成は軽く嘆息した。
「そうですか」
今さら怒鳴る気にもなれない。
紗也が目の前の事しか見えていないのは、今に始まった事ではないからだ。
彼女に悪気がない事はわかっている。
ただ思慮が足りないだけだ。
和成が手綱を引いて歩き始めようとした時、紗也が袖を引っ張った。
「ねぇ、乗って帰った方が早くない?」
「そうですけど、紗也様、馬に乗れないでしょう?」
「うん。だから一緒に。和成が手綱を取るの」
「え……」