月下の誓約


 紗也の思いも寄らない提案に、和成は躊躇し口ごもる。


「ですが、一緒に乗ると身体が触れ合ってしまうので、ちょっと……」


 それを聞いて紗也は白い目で和成を見た。


「なんか、いやらしい」


 和成は一瞬絶句して息を飲む。
 そして、ふてくされたようにそっぽを向いて投げやりに答えた。


「すみませんねぇ。助平おやじで。あなたのお召し物が汚れるのを心配したつもりだったんですけど。私はこんなナリですし」


 和成が血の付いた着物の胸元をつまんで見せると、紗也は気まずそうに苦笑した。

 そして取り繕うように言う。


「あ、そっか。でも平気。多少汚れてもかまわないから一緒に乗って」
「かしこまりました」

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